東京藝術大学美術学部先端芸術表現科3年生の「古美術研究旅行」として、学生や教授ら14人は16日に来熊。花の窟神社や紀宝町の神内神社、新宮市の神倉神社などを訪れて地域の神社仏閣にふれ、熊野地方の歴史や文化、信仰への理解を深めた。
同科は平成11(1999)年4月に設置され、美術の分野を超える教育研究の実践を目指している。従来の芸術大学や美術大学では、絵画、写真など扱う技法によって各科が編成されるが、同科では芸術の持つ意味そのものを「表現の問題」として捉えており細分化はしていない。芸術、美術だけでなく社会に対する鋭い問題意識を持った多彩な人材を輩出しており、卒業生は、起業家、プロデューサー、編集者、研究者など多彩な才能を開花させ、様々な舞台で活躍している。
この研究旅行は3年次の必須授業で、当地方のほか、京都や奈良など科ごとにルートを決め、日本の宗教や文化を学んでいる。
一行は花の窟神社や鬼ケ城を視察した後、神内に到着。ここでは神内生き活き協議会(樫山祐一代表)が古神殿や神社境内を案内し、ここにまつわる伝承などを解説した。
神内神社は熊野の自然崇拝の有り様が現在に伝わる神社のひとつで、社殿はなく、石英粗面岩(熊野酸性岩)の岸壁を御神体としている。明治時代、神社合祀が行われる以前はこのような神社も数多く見られたが、現在はほとんどが失われている。
学生たちは、同神社の御神体が巨岩であることのほか、神社が安産祈願の「子安の宮」と呼ばれ毎年多くの夫婦が足を運ぶこと、境内には「安産樹」「夫婦杉」「蘇りの木」といったパワースポットがあることなどを学んだ。
カメラを片手に神社内の様々な景観を撮影していた学生たちは、都会では見られない自然が作り出した独自の風景に感嘆の声を上げていた。