噓ニュースとヘイト 人権トップセミナー首長ら危険性を共有

 令和7年度紀南地区人権トップセミナーが2月27日、熊野市井戸町の県熊野庁舎で開かれた。熊野市、御浜町、紀宝町の各首長や教育行政関係者ら約40人が出席。フェイクニュースとヘイトスピーチなど人権行政の課題について理解を深め、意識の共有を図った。

 同セミナーは、紀南地区の行政機関における人権意識の向上を図り、地域の特性を生かした人権尊重のまちづくりを推進することを目的に開催している。

 開会にあたり、主催者を代表して県紀南地域活性化局の天野長志局長が挨拶。「ヘイトスピーチ解消法など、いわゆる差別解消三法が施行されてから約10年が経過しようとしているが、人権課題は依然として残り、むしろ複雑化・多様化している。部落差別や女性、高齢者の問題に加え、インターネット上の差別も広がっている」と現状を指摘。県が令和5年4月に施行した「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例」に触れ、「人権が尊重される社会の実現に一層取り組んでいく」と述べた。

 講師は龍谷大学法学部教授で国連人種差別撤廃委員会委員も務める金尚均(キム・サンギュン)さんが務め「共生と排外主義~ヘイトスピーチを放置してしまうと~」をテーマに講演した。金さんはまず「いま国連ではヘイトスピーチ、ヘイトクライムの背景に嘘の情報があると言われて、この3本柱で対策を建てようとプロジェクトが続いている。難題は社会において、敵と味方、いわゆる分断と言われるものの一番の危険がフェイクニュース。それをどう見分けるか」と述べ、スマートフォンに依存した社会、インターネット社会の中でフェイクニュースが差別の土壌になっている現状を解説した。

 2000年ごろから在日韓国・朝鮮人を標的とした差別的言動がインターネット上や街頭で目立ち始め、2015年にはヘイトデモなどが全国で376件確認されたと説明。公然と攻撃的な言辞で誹謗中傷し、差別をあおる行為が社会問題化してきた経緯を振り返った。金さんは「フェイクニュースは単なる〝デマ〟だが、ソーシャルメディアに載ることで〝ニュース〟の体裁を持ち、人々の信じたい情報と結びつくことで拡散する」と警鐘を鳴らした。

 また、確証バイアスやエコーチェンバー現象にも言及。自分の意見を肯定する情報ばかりを受け取る環境では、事実が事実でなくなり、分断が深まる危険性を示した。ヘイトクライムを放置すれば、「差別は仕方がない」という誤ったメッセージを社会に与え、法制度への信頼を損なう危険があることも指摘した。

 差別解消に向けた法制度の効果は象徴的意味を持つ一方、被害回復の負担が当事者に偏りがちな現状も課題とし、「差別を『なかったこと』にしないため、現実に起きている問題を直視することが第一歩であることを訴えた。

 参加者はメモを取りながら熱心に聴講。デジタル社会における人権課題と向き合う重要性を再認識する機会となった。

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