水確保も十分対応可能 熊野アグリパーク市長ら金山で住民に説明

 熊野市は23日、金山多目的集会所で金山町の住民を対象に熊野アグリパーク整備事業の説明会を開いた。河上敢二市長は冒頭の挨拶で通過型観光から滞在型観光への転換への想いを語り「地域との連携協力を非常に大きなポイントとして運営していきたい」と理解と協力を求めた。金山地区で懸念となっている水量の問題についても十分対応できる考えを示し、水圧も含め「全く心配の無いようにしていきたい」と語った。

 建設地となる金山地区の説明会には住民約30人が参加。市からは河上市長はじめ大井伸剛農林水産課長、熊野アグリパーク推進室の﨑範敬室長らが出席した。説明によると、同事業は農業振興をはじめ、市内産業を多角的にリードできる交流拠点を整備し、生産、加工、販売、体験、学びなどを通じ、自然や第1次産業への理解の増進を図るとともに、6次産業化の推進や滞在型観光の促進が目的。

 令和11年度にファーマーズマーケットや子ども向け屋内遊具施設、ジェラート販売店などの無料エリアをプレオープン。その後、段階的に令和13年度にチョコレートやパン、コーヒー、菓子、ビール工房や体験教室、動物とのふれあい体験施設、レストランといった有料エリアをオープンさせ、同17年度の宿泊エリア開業で本格オープンとする計画。

 全体概算工事費は当初約30億円としていたが、建設資材コストなどの影響などを考慮し約46億円と試算した。国の有利な交付金を可能な限り活用。市の実質的負担額を4・5億円とし、10年間の工事のため単純計算で市の年間負担額は4500万円になるという。

 観光集客の面で、東紀州地域の宿泊率は約21%。熊野市は年間100万人の観光客があるが、8割が通過している状況。県が令和5年度に作成した推計書によると、日帰り客の平均利用金額は6300円だが、宿泊を伴うと2万6千円になる。河上市長は「熊野道路の完成まであと4~5年かかる見通し。延伸を見越し新たな観光集客の取り組みを行う必要があります。アグリパークは宿泊に結びつけられる施設を作り、高速道路でやって来る観光客をせき止めするのが大きな狙い」と語った。また、「熊野市は観光と一次産業が基幹産業。地域全体の農業にプラスをもたらす取り組みも必要。ファーマーズマーケットを設けて販売の場所を作らせて頂く予定。付加価値を高めないと農家の皆さんの手取りは増えないという思いもあり、加工施設による6次産業化を少しでも進めたいという思いです」と述べた。

 運営にあたっては伊賀市の「伊賀の里モクモク手づくりファーム」の創設者や各方面の専門家の支援を受けることを考えている。市も出資し運営主体の一部にはいるが、市が運営の中心になるのは避ける。河上市長は「地域の産業関係の団体、金融機関、民間企業の皆さんにも出資を頂き、場合によっては人の派遣を受け、専門家のアドバイザー的な役割も考えています」と話した。

 河上市長は「我々としては地域の皆さんとの連携協力が最も重要と思っています。高齢者や障がいをもった方の働ける場所で、ファミリー層をターゲットとした施設ですので、昔遊びを教えていただくような場面も作れないかなど、地域の協力を頂きながら運用を図っていきたい。今後も回を重ねて説明する機会があると思います。ご検討頂ければ幸いです」と協力を呼びかけた。

 担当職員の説明では、事業行程は令和9年度から造成、10年度から無料・有料エリアの建築工事、15年度から宿泊エリアの建築に入る予定。無料エリアの第1期プレオープンでは年間売上目標約5億7千万円、36人の雇用を目指す。有料エリアがスタートする第2期プレオープンでは売上目標約8億9千万円、雇用81人、17年度本オープン後の令和18年試算は約11億1千万円の年間売上目標、105人の雇用を見込んでいる。

 金山地区ではこれまでにも水利を心配する声が出ている。市ではアグリパークで1日あたり使用する最大水量を525㌧と試算。井戸町の浄水場では1日1200㌧の余剰水量があり、それを回すことで水の確保は十分対応できるという考えを示した。施設内に設けられる人工小川の水などは、基本的に雨水の循環を想定している。河上市長は「市街地に張り巡らされている水道管の太さや水圧を調査しています。市内の水量は足りていますが、水圧が少なくなると生活に支障が出ます。水圧が低くなるとなれば加圧ポンプやタンクを加えることも考えなければいけない。金山の皆さんが水を懸念しているのは理解していますので、全く心配の無いようにしていきたい」と述べた。

 質疑応答では工事車両や施設利用者の車による生活道路への影響を懸念し、安全対策や道路拡張の検討を求める意見や、浄化槽の処理水が近くの川などに与える影響などの質問がでた。市によると処理水については合併処理浄化槽から流れるため、基本的にはきれいな水と判断しているという。住民からは水質調査など不安を払拭する取り組みが求められた。住民の一人は「成功してほしいが運営会社などが決まっていないため不安」と話した。

 市では今後も市内5会場で住民説明会を開催予定。河上市長も他の公務などがない場合、できる限り出席し直接説明するという。事前申込不要だが、地区ごとの意見を聞きたいため「お住いの地域の説明会にご参加をお願いします」と呼びかけている。説明会の開催日時や地区は次の通りで、時間はいずれも午後6時から。

 ▼磯崎、大泊、木本、井戸、有馬、久生屋町対象=6月6日(金)、市文化交流センター

 ▼飛鳥、五郷町対象=6月23日(月)、飛鳥小学校体育館

 ▼育生、神川町対象=6月30日(月)、神上生活改善センター

 ▼紀和町対象=7月4日(金)、紀和コミュニティセンター

 ▼須野、甫母、二木島里、二木島、遊木、新鹿、波田須町対象=7月11日(金)、新鹿公民館

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