長嶋、水上医師が抱負 「地域に恩返しを」 紀南病院有馬出身2人の若手医師

 御浜町阿田和の紀南病院に4月、熊野市有馬町出身の若手医師2人が赴任した。内科の長嶋一訓医師(31)と外科の水上拓哉医師(30)。ともに有馬中学校から近畿大学附属新宮高校へ進学し、三重大学医学部へ進んだ。地域医療を担う医師の確保を目的とした「地域枠B」で学んだ2人に、医師を志したきっかけや地域医療への思いを聞いた。

 三重大学医学部の地域枠Bは、医師の総数確保および地域偏在の是正を主たる目的とした入学枠。医師となり臨床研修を終えた後、2年間以上を推薦地域など医師不足地域で勤務することが求められ、県内の医師不足解消を担う人材育成の柱の一つとなっている。

 長嶋医師は両親が教師だったことから当初は教員を志していたが、母親の勧めもあり医学の道を選択。「それなら近大新宮で医学部を目指そうと思った」と振り返る。

 一方、水上医師が医師を志したきっかけは中学生の時の身内の事故だった。搬送先の紀南病院で医師らの懸命な救命処置や家族への配慮に接した経験から「医師や看護師の姿に感銘を受けた。医者はいい仕事だと思った」と話す。

 2人とも地域枠Bを選んだ理由について、「通常の推薦入試より挑戦する機会が多かったこともあるが、地域への恩返しをしたい気持ちがあった」と口を揃える。

 医師になってからの現実は、ドラマなどで抱いていたイメージとは異なったという。長嶋医師は「命を救えないことも多いし、診療以外にも書類や学会発表などやることが膨大」と語る。それでも専門とする糖尿病や内分泌疾患の患者が改善し「先生でよかった」と言われることが大きな励みになっている。

 水上医師も研修医時代を「下積みは大変だった」と振り返る。前任地では年間120~150の手術をこなした。これは通常の1・5倍という。外科医として数多くの手術経験を積み、難しい手術を無事終え、患者が元気に退院する姿を見ることにやりがいを感じている。「患者さんや家族から納得や感謝の言葉をいただけると、この仕事をやっていて良かったと思う」と話す。

 故郷での勤務について長嶋医師は「地元の話題をきっかけに患者さんとの距離を縮められるのは、この地域ならでは」と語る。水上医師も5年ぶりに戻り、「改めて帰ってくると不便さも感じるが、運転はしやすい」と笑顔を見せた。

 地域医療の課題について、2人は高齢化や独居高齢者の多さを挙げる。長嶋医師は「90代で一人暮らしの方も珍しくない。糖尿病は家族の支援が必要な病気だが、薬や注射の管理が難しい患者さんも多い」と指摘する。水上医師も「家族が遠方に住み、治療方針の説明や同意手続きが難しいケースもある」と話した。

 今後について長嶋医師は「この地域には糖尿病や内分泌の専門医が少ない。2年間の中で専門知識を生かし、地域で受けられる医療の幅を広げたい」と抱負を語る。水上医師は「外科なので手術で恩返しできるのが一番だと思います。医療資源が限られる中でも最善の医療を提供したい。地域で対応できる手術をしっかり行いたい」と力を込めた。

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