農地継承や生産拡大 就農は大チャンス 御浜シンポジウムで考える

 御浜町中央公民館で22日、三重南紀・農業後継者確保のためのキックオフ・シンポジウム(山門祐典実行委員長)が開かれた。来場者が講演や柑橘農家の座談会を通じ、新規就農や農地継承など、産地として持続可能な生産体制や農業を考えた。

 シンポジウムは農地継承の仕組み構築の足掛かりとして▽新規就農者が増えていること▽農地継承の大切さ―を知ってもらい、産地の明日を話し合う目的。御浜町が共催した。会場には鈴木英敬衆院議員、吉川有美、山本佐知子両参院議員、東紀州選出の谷川孝栄、藤根正典、東豊県議、山本章彦町議会議長もお祝いに駆けつけた。

 開会に当たり、大畑覚町長が「昨年の全国の柑橘生産量ははじめて60万㌧を下回った。三重南紀は前年から30%減少し5千㌧に届かなかった。この課題をしっかり受け止め対策を講じたい。シンポジウムが産地の起爆剤となり、これからの産地に10年間で100人の研修生・新規就農者を確保することを宣言し、産地の思いを一つにしたい」と挨拶した。

 来賓祝辞に続き、新規就農の研修などを行っているJA伊勢営農柑橘グループの鈴木賢さんが「産地の歴史を振り返る」をテーマに講演。国営農地開発や崎久保早生の誕生などの歴史を語り「今の産地は成熟した状態。これまで覚悟と熱意を持って色々なことを進めてきた。それは時代が変っても一緒でそれができる産地」と語った。

 ベテラン農家による座談会では長年柑橘生産に携わっている東光洋、筒井道夫さんが三重南紀ミカンはバイヤーや消費者の期待を受けていること、品質や収量が産地として最も大きな力になることなどを話した。引き続き、町農林水産課の仲村和彦課長が町の取り組みを紹介。農家人口や収量が減少する中、課題克服のためプロモーションサイト「青を編む」を立ち上げ、動画やSNSを絡めた情報発信に注力すると共に、新規就農希望者の受け入れ・サポート態勢を強化し、着実な成果が出ていることを示した。

 この後、山門実行委員長、仲村課長を司会に、髙岡洋、片岡利充、山本善幸さんら中堅農家、新規就農者の持好孝、西岡宏展、西岡長閑さん、研修生の岡澤壮史、大谷かんなさんによる座談会へと移った。岡澤さんは「御浜町を選んだのは他の産地より農地確保に力を入れていると感じた」。大谷さんは「独立するに当たって畑を確保していくことになるが、ゼロからのスタートになると畑の確保は難しいと感じる。こういった機会で探しているということを知っていただけたら」と話した。

 髙岡さんは「御浜町の生産者でJAに出荷して1千万円以上売り上げる農家は毎年25軒あり、平均1600万円ぐらいある。町の取り組みは全国の皆さんにチャンスを提供し、御浜町を選んでくれた方は、そのチャンスを掴む可能性が大きくある」と、新規就農者増加を期待。名古屋から移住し就農した西岡長閑さんは農地継承が上手く行った例を語り、先達からの助言が大きな力になっていることを伝えた。

 山門執行委員長は「新しい取り組みをすると色々な問題が起き、現実にぶち当たる。その課題を一つずつクリアしていくと失敗ではない。そういう取り組みに皆でしていければ」と締めくくった。

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