世界に自慢できる施設 健やかに育つ環境に 児童養護施設東紀州こどもの園開所

 熊野市木本町出身の葉田順治氏が取締役会長のエレコム株式会社(本社・大阪市)により、金山町に建設された「東紀州こどもの園(こどものその)」プロジェクト・児童養護施設の開所式が2日に開かれた。葉田会長や設計を手掛けた世界的建築家・隈研吾氏、一見勝之三重県知事らが出席し、盛大に開所を祝った。

 こどもの園は葉田会長が私財を投じて建設プロジェクトを立ち上げた、東紀州地域では初の児童養護施設。新国立競技場を設計した隈氏が設計を手掛けた。隈氏によると施設は地元材を使って曲線を使い、周囲の山並みに溶け込むデザイン。木造建築の伝統を生かし、軒は低く中はゆったりした空間を演出した。敷地面積約2千平方㍍、施設面積約800平方㍍で、児童家庭支援センター「きしゅう」と児童養護施設「さくら」、管理棟からなる。心理相談室や心理療法室、地域交流スペース、プレイルームなどが設けられ、支援相談員4人体制。地域小規模児童養護施設「さくら」は0~18歳の4人が居住でき、一時保護などのシェルターも含めると約10人に対応できるという。総事業費約6億5千万円の内、5億円は葉田会長が資産を寄贈し、エレコムが2500万円、県と国の補助金計1億1500万円。

 開所式では葉田会長と隈氏、一見知事、河上敢二市長、運営する社会福祉法人聖マッテヤ会の池田修一理事長、城育朗金山区長がテープカット。隈氏が「紀州という日本の木の聖地で、最高の木を使って仕事ができ、感謝しています。改めて紀州の木は凄いなと感じました。最高の木の技術で、子どもたちがリラックスでき、楽しく過ごせる建物になりました」と述べ、葉田会長から隈氏、日本土建、榎本工務店、アスカ総合設計へ感謝状が贈られた。

 葉田会長は「数年前、東紀州でも虐待があると聞いてビックリし、プロジェクトを思い立った。施設というと閉鎖的なものだが、子どもたちがのびのび遊べる開放的な空間にしたかった。子どもたちは地域の宝。貧困など色々な問題があるが、少子化対策の前に子どもたちがきちんと育つ環境を整えないといけない。4日から2人の子どもが来る。地域の宝として皆さんに育んでいただき、できれば子どもたちが健やかに成長し、この地で結婚して子どもを産んでくれれば。今日からがスタート。子どもたちをよろしくお願いします」と挨拶。池田理事長が葉田会長へ感謝状を贈呈し「2年前に御浜町の児童家庭支援センターへ突然ご訪問下さり『児童養護施設を作りたい』と熱意と温情あふれるお言葉を頂いた。大舎制から小舎制へ移行できることになり、課題は多いが地域の要望に応え養育を推進していきたい」と感謝した。

 続いて一見知事と河上敢二市長が「子どもの数は減っているが虐待や発達等の相談は増えている。東紀州では初の児童養護施設であり、相談できる場所も併設しているので、子育て家庭を守る砦として、子どもたちに必要な支援が行き届くよう取り組んでいきたい」と祝辞。マッテヤ会の高地敬理事が謝辞を述べた。

 最後に質疑応答の時間があり、隈氏は改めて「紀州には最高の材料と技術があり、それをふんだんに使って技術の粋を見てもらえると思う。世界に向かって自慢できるものができた」と称賛。葉田会長は「広い施設なので地域との交流も出来る。子どもたちにも素晴らしい施設で育ったというプライドを持ってもらえると思う」と語った。

 施設では虐待や不登校、発達などについての相談も随時受付。電話0597・80・0180番。

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