バラ園の広がりを夢見て―。熊野市五郷町寺谷、国道309号沿いにある井田剛さん(54)方で無数のバラが見頃を迎えている。春から秋にかけて咲き続ける四季咲きの品種が多く、甘い香りと色とりどりの優雅なバラが訪れる人を魅了している。
井田さんは紀伊半島大水害の前に五郷町に移住。もともと園芸が好きで、2年前から本格的にローズガーデン作りを始めた。つるバラや半つる性のシュラブローズ、木立性のブッシュローズを巧みに組み合わせ、まるで一枚の絵画のようにバラの庭を広げている。
バラは美しさと比例するように手入れが難しく、根気がないと上手く育てられない。「バラは手間がかかるけれど、それだけに応えてくれる。バラが好きだからやっています」と井田さん。品種ごとの性質や生長にあわせて独自の手入れを工夫し、獣害や害虫とも向き合いながら、日々愛情を込めて育ててきた。
その努力は実を結び、わずか2年で庭は大きく変貌。現在、パレード、ロココ、シェラザード、アンクルウォルターなど47品目計52株が咲き誇っている。
庭は道行く人の目を引き、近隣住民やドライバーが足を止めて見学することもしばしば。「まだ完成の半分にも届いていません」と井田さんは笑うが、そのまなざしは次の夢を見据える。「学校や公共施設にバラ園が広がれば面白いと思う。バラは手入れが大変な分、シルバー人材などの雇用にもつながるのでは」と語る井田さんの大きな夢は、地域に根ざした花の文化の創造だ。
井田さんのバラ園はオープンガーデンとして自由に見学できる。場所は国道309号旧五郷小学校前から奈良方面へ約100㍍の左手にある。