御浜町中央公民館で22日(日)午後1時から4時まで、三重南紀・農業後継者確保のためのキックオフ・シンポジウムが開かれる。同シンポ実行委員会(山門祐典実行委員長)主催、御浜町共催。無料で事前申込不要の自由参加。主催者や来賓挨拶に続き、講演「産地の歴史を振り返る」やベテラン農家らによる座談会、御浜町の取り組み紹介、 若手・中堅農家らによる座談会などを予定している。
シンポジウムは農地継承の仕組み構築の足掛かりとして▽新規就農者が増えていること▽農地継承の大切さ―を知ってもらい、産地の明日を話し合うために開催する。
「年中みかんのとれる町」をキャッチフレーズにする御浜町だが、町の情報発信などを行う一般社団法人ツーリズムみはまによると、町の農家人口は最盛期だった1995年の3485人から、2020年では7割以上減少し795人。担い手の平均年齢は70代以上が半数で、近い将来のさらなる農家人口減少が危惧されている。同時に生産量も減少し続けており、2023年度は約8千㌧で推移。一般的に「6千㌧を切ると産地としての市場価値が下がる」と言われており、対応が急がれた。
町は主産業の一つ「みかん農業」を持続可能なものとするため、原動力となる農業後継者育成を強化。2022年3月にプロモーションサイト「青を編む」を立ち上げ、動画やSNSを絡めた情報発信に注力すると共に、新規就農希望者の受け入れ・サポート態勢を強化している。
関係者によると「みかん、やったらええやん」と言い合える町を目指すこのプロジェクトは、開始後すぐに反響があり、それまで年間数件だった問い合わせが急増。昨年度は45件にまで増えた。「みかん農家になりたい」と名古屋、兵庫、神奈川、東京など主に都市部から移住者が増え、地元や近隣地域からも就農希望者が増加しているという。
23~24年度の2年間で20人の研修生を受け入れ、25年8月までに17人が経営を開始予定。町では2033年4月に新規就農者数100人を目指している。一方、新規就農希望者の増加に伴い、農地確保などの課題もあり、受け入れ・サポート体制のさらなる強化、課題解決に取り組む必要性が出てきている。
町内に荒廃した畑は数多いが、それを耕し新たに苗木から育てるとなると、実際収入になるのは5年後。直前まで手入れがされていた畑を借りる・買うことが出来るのが「理想的」で、引退する農家からの「農地継承」をいかにスムーズに出来るようにするかが課題の一つ。農地継承を行わず、畑を荒らしてしまうことは、産地の財産を削ることにもなる。町全体で見ると獣害拡大や景観を損なうなど、地域の持続性にも影響を与える。
「農地継承」をスムーズに行えるようになれば、さらに多くの新規就農者を育てることが可能となり、産地を未来へ繋げられる。全国で同じ課題を抱えている地域が数多くある中、御浜町はこの課題解決に真っ向から向き合う。
プロジェクトを主導する御浜町役場農林水産課の仲村和彦課長は「新規就農者のサポート体制のより一層の充実を一気に進めています。出てきた課題に一つずつ向き合っています。地元の方への理解促進と、産地の一体感醸成を次のミッションと捉え、今回のシンポジウムを企画しています」と話した。
また、山門実行委員長は「プロジェクト開始以降、日本全国からたくさんの新規就農希望者が御浜町に来てくれている光景を目にして、希望を感じています。課題を解決できるのは地元住民であり、農家である自分たちです。これまで『役場やJAは何もせん』と、好き勝手に言ってきましたが、『自分たち農家は何をしたか?』と思い返すと、もっと協力できることがあるだろうと。シンポジウムのメインとなる『座談会』ではそれぞれの立場で、それぞれが思うことをぶつけ合って、産地の明日を考えるキッカケにします」と話し、来場を呼びかけた。
シンポジウムの問い合わせは御浜町役場農林水産課(05979・3・0517)へ。