熊野市は29日、久生屋地区で認知症高齢者を想定した「徘徊声かけ訓練」を行った。町民ら約20人が参加し「熊野市徘徊SOSネットワーク事業」への理解を深めるとともに、地域ぐるみの見守り体制強化を図った。
市では市社会福祉協議会や市消防本部、熊野警察署などと連携した「熊野市徘徊SOSネットワーク事業」を展開している。同事業は行方がわからなくなる可能性の高い認知症や知的障害などのある人を、家族の希望で登録してもらい、情報共有することで行方不明発生時に備えるもの。
訓練ではまず市地域包括支援センターの小川友香係長が挨拶。令和5年度は全国で約9万人の行方不明者があり、その内約2割が認知症の症状があると思われる人だったことなどを話した。「熊野市徘徊SOSネットワーク事業」には現在13人が登録しているという。小川係長は地域の見守り体制の大切さを伝え、協力を呼びかけた。
引き続き、熊野署や市消防本部の職員がそれぞれ行方不明者の捜索対応について説明した。通報が遅れれば遅れるほど捜索範囲が広がり、日が暮れると捜索は困難になる。警察、消防からは共に行方不明者が出た場合はいち早い捜索届など通報が求められた。
熊野市社会福祉協議会からはゴーイングサービス(緊急時安否確認事業)が紹介された。これは本人と連絡が取れない時、家族に代わって本人の安否を確認し、状況を知らせるサービス。対象となるのは独居中の65歳以上または心身に障害を有する人の家族など。市社協(0597・89・5000)で問い合わせを受け付けている。
また、市包括支援センター保健師の濵口比奈多さんは「熊野市徘徊SOSネットワーク」について紹介。認知症の人の徘徊の特徴や声掛けの方法を伝えた。声をかける時は「ゆっくり近づいて、相手の視野に入ってから話しかける」「穏やかに一つひとつ質問し、すぐに返答がなくてもゆっくり待つ」「捜索中の人、徘徊と思われる人であれば『少し休みませんか』などと、その場に留まってもらえるようにし、警察に連絡する」ことがポイントという。
この間、認知症の高齢者が行方不明になったという設定で徘徊模擬訓練を実践した。同センターの職員が乳母車を押す徘徊者役となり久生屋公民館周辺を歩き回った。靴の大きさがあっていないなどの特徴に気づいた訓練参加者が声をかけ、警察に通報するまでの流れを練習した。