戦争経験して残した「平和」の文字 出征者の想い感じて 飛鳥から「平和」のメッセージ 

 熊野市飛鳥町神山の民家近くにある岩盤へ、純白に色付けされた「平和」の文字が浮かび上がった。ロシアの侵攻によって世界情勢が混とんとする中、最も響かせたいメッセージとして共感を呼んでいる。

 熊野市飛鳥町出身で現在は和歌山県橋本市に住む二階堂昭さん(63)によるものだが、この「平和」の文字は、二階堂さんのおじにあたる故・山本繁次さんが30~35年ほど前に制作したもの。山本さんは太平洋戦争で激戦が繰り広げられた沖縄へと出征。米軍の捕虜も経験した。終戦後もことあるごとに「戦争は絶対にいけない」「平和でないといけない」「平和は大切」と二階堂さんらにも説いていたという。

 山本さんは生前、この岩盤の地主である福山秀さん(62)方に「もっと世界が平和になってほしい。この岩盤を使わせてもらえないか」と打診。福山さんが快諾すると手ノミでコツコツと数ヵ月かけ、1文字が2㍍近い「平和」の文字を完成させたという。

 その後は風雨によってペンキがはがれ、汚れ等で文字も見えにくくなっていた。この文字の事が頭にあった二階堂さんは、現在のウクライナ情勢を受けて「今こそおじさんの想いが大切」と5月の連休を利用して帰郷。亡きおじの言葉を思い返しながらコケ取りなどの清掃作業を行い、かつてのおじと同じく純白のペンキで文字を浮かび上がらせた。

 近くに住む福山さんは「もう30年以上前ですが、コツコツと手ノミで少しずつ掘り進めていたのを覚えています。飛鳥から少しでも多くの人にメッセージとして伝われば」と話し、二階堂さんは「戦争というと『昔の話』というイメージでしたが、ロシアのウクライナ侵攻を見るとすぐそこの現実。作業をしながらおじさんの言葉を鮮明に思い出しました。生前からとにかく平和の大切さを語っており、悲惨な戦争を経験した人ならではの思いを少しでも感じてもらいたい」と話していた。

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