三重県は15日、熊野市文化交流センターで熊野古道世界遺産登録20周年記念「持続可能な保全体制づくりシンポジウム」を開いた。熊野古道の保全に尽力している9団体を表彰。メッセージ発表やパネルディスカッションなどを通じ、世界の宝である熊野古道を後世に守り伝えていく意志を再確認した。
熊野古道伊勢路全域で持続可能な保全の仕組みが構築できることを目指して開催。古道や行政関係者、一般来場者ら約60人が来場した。
開会に当たり三重県の野呂幸利副知事が世界遺産登録の日の思い出などを語り「保全をしてこられた方々、守り伝える活動を行ってきた皆様に感謝申し上げます。シンポジウムが熊野古道の誘致や保全活動の意義深い会になることを祈念します」と挨拶。開催地の大西浩文副市長も保全に関わる人達への感謝を述べた。
引き続き、概ね10年以上にわたり古道保全などに取り組んでいる熊野古道伊勢路を守る会、三瀬の渡し保存会、三瀬坂峠を守る会、馬越峠道普請隊、八鬼山を愛する会、二木島峠・神坂峠世話人会、一般社団法人熊野レストレーション、熊野あらけ隊、くまのエコツーリズム研究会に感謝状が贈られた。
受賞者を代表し、熊野あらけ隊の陰地成典さんが謝辞。熊野古道や地域に埋もれている街道の掘り起こしなどの活動を紹介し「義務感でも強制的でもなく、ただ単に活動が楽しい」と話した。熊野あらけ隊のメンバーは陰地さんと尾川あや子、新谷愛子さんの3人が中心。しかし先日、ムードメーカーだった尾川さんが活動中に遭難し帰らぬ人となった。陰地さんは表彰式の欠席も考えたが「尾川さんの存在を知っていただきたいと思い参加させて頂きました。これからも心の中の尾川さんも一緒に整備を続けてきます」とスピーチし来場者の胸を打った。
この後、「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産登録された平成16年に生まれた熊野市の川口心春、小杉柚さんが登壇。平成26年に世界遺産登録10周年を記念し、世界遺産登録の年に生まれた当時の東紀州の小学4年生315人が書いた「10年後へのメッセージ」を披露した。将来の目標に向け勉強を重ねる二人はメッセージを発表した後、故郷の自然や温い人のつながりが今後も続いていくよう願いを語った。
休憩を挟み、三重県南部地域振興局の佐波斉局長をコーディネーターに、熊野古道協働会議世話人の三石学さんと熊野古道協働会議分科会座長の玉津充さんが「熊野古道の今後の保全活動について」をテーマにパネルディスカッションし、来場者に感銘を与えた。