Sマルチやスマート農業 柑橘現場フィリピンの大学長ら視察

 御浜町志原にある丸山みかん農園に28日、フィリピン共和国のヌエバ・ヴィスカヤ州立大学(NVSU)からウィルフレッド・デュマレ・ジュニア学長ら4人が訪問。三重大学大学院生物資源研究科・生物資源学部の岡島賢治教授や、同大学みえの未来図共創機構地域共創展開センターの藤山宗准教授ら7人とともに、スマート農業や高品質みかんづくりに向けた「Sマルチ」の取り組みを視察した。

 三重大とNVSU大学は「柑橘類の育種・栽培・加工に関する共同研究」を進めており、今回の訪問はその一環。丸山みかん農園を経営する丸山俊明さんは、極早生温州を中心に約50アールの園地で農業のデジタル化を推進。気象や雨量などのデータをスマートフォンに転送し、水分量が不足すれば自動的に点滴灌水を行う仕組みを導入している。

 「勘や経験よりデータを重視したい」と語る丸山さんは、大手電機メーカーで品質管理を担当していた経歴を持つ。その経験を生かし、農業でもPDCAサイクルを回す「データ化・見える化」をテーマに掲げている。数年前から三重大学と共創活動を続け、今年度は農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)と協働でSマルチ技術の試験導入に取り組む。

 Sマルチは農研機構が開発した温州ミカン向けの高品質生産技術。防水・防根シートを樹の根元周囲の土中に埋設し、地表をマルチシートで覆うことで根域への雨水浸透を抑制。適度な乾燥ストレスを与えることで果実の糖度を高める仕組みだ。

 NVSU大学はフィリピン北部ルソン島に位置し、同国で「柑橘栽培の首都」と呼ばれる地域にある。ヌエバ・ヴィスカヤ州では1981年、静岡県御殿場市から温州ミカンの苗木を譲り受けたことを契機に柑橘栽培が始まり、現在は温州やポンカンが広く栽培されている。

 一行は丸山みかん農園の園地や三重県果樹研究室、JA統一選果場などを視察。ウィルフレッド学長は「日本の柑橘生産の現場を見せていただき感激した。行政と生産者の連携体制はフィリピンも学ぶべき点が多い」と話した。

 丸山さんは「まさかフィリピンの大学の学長さんにこんな所まで来てもらえるとは。一緒にスマート農業を進めていければ」と笑顔を見せていた。

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