熊野古道語り部友の会の最年長ガイド、谷口昌宏さん(90歳、紀宝町大里)は1日、熊野市役所で記者会見し、小冊子「熊野古道伊勢路 松本峠―松本峠に残る祐天上人の名号石塔」を発刊したと発表した。12年間にわたる語り部活動の集大成として作成。松本峠(熊野市木本町)に残る石塔が江戸時代の高僧・祐天上人の名号石塔であることを明らかにするとともに、県教育委員会の最新調査成果も反映し、松本峠の歴史を分かりやすくまとめている。
谷口さんが石塔に関心を持ったのは数年前、祐天寺近くに住む観光客を松本峠に案内した際、地蔵菩薩近くの石塔に言及していたことがきっかけ。昨年から本格的な調査を始め、熊野市大泊町の郷土史研究家・向井弘晏さんの協力を得ながら資料収集を進めたほか、東京都目黒区の宗教法人祐天寺と祐天寺研究室へ調査を依頼した。昨年11月には専門家を交えた現地調査が実施され、石塔は祐天上人の名号石塔で間違いないとの見解が示された。
石塔は正徳2(1712)年建立で、高さ約35㌢。全国で約350基確認されている祐天上人の名号碑の一つだが、西日本では比較的少なく、三重県では8基目、熊野地方では初めて確認された。また、祐天上人が「十万人講」を始める前年、大僧正となる前に建立された可能性が高く、生前建立の古い名号石塔としても価値が高いという。
作成した小冊子には、今年3月に三重県教育委員会が刊行した「熊野参詣道伊勢路調査報告書Ⅲ」の成果も反映。これまで「江戸道」と「明治道」に分けて説明されてきた松本峠について、木本側へ下る道では江戸時代と明治時代の石畳が混在していることなど、最新の知見を踏まえた内容としている。
谷口さんは「ガイドは日々探求と反省の積み重ね。正しく理解し、お客様に伝えることが何よりの喜びです。祐天上人の直筆に間違いないとの見解が得られ、文化財として後世に残すべき貴重な石塔だと考えています。この冊子が松本峠や祐天上人を知るきっかけとなれば」と期待を寄せた。
冊子は500部を自費で制作し、販売は行わず東紀州地域振興公社で無料配布する。谷口さんは「どうしても松本峠の魅力を一冊にまとめたかった。祐天上人との出会いで内容に厚みが増し、集大成にふさわしい冊子になった」と話している。

