熊野の幸せ考える 日本文化の砦となる場所 Mix熊野〝プレ〟シンポジウム

 熊野市の地域おこしグループ「Mix熊野」(野地真美代表)は6月29日、木本町、きのもと会館で〝プレ〟シンポジウム「ほかでもない、熊野の幸せとは?」を開いた。市内で活躍するI・Uターン者6人がそれぞれの立場から熊野への想いを熱く語った。

 同グループでは熊野の将来を皆で一緒に考えるシンポジウム企画を検討している。今回は「ひとまず小さくやってみよう」と、〝プレ〟シンポジウムを実施。はじめに野地代表が「移住者の皆さんは前向きで、一緒に活動することで熊野のまちおこしのきっかけになるのではと2年前にMIX熊野をつくりました。シンポジウムは初めての経験で、皆さんからご意見を頂ければ」と挨拶した。

 第1部では五郷町在住の根本亜希子、本田優、水田祐介さん、新鹿町在住の萩原里美さん、遊木町在住の大川智絵さん、飛鳥町在住の竹村ひささんがパネリストとなり「熊野の幸せ、それぞれのカタチ」をテーマに意見を語った。

 移住組では、根本さんは埼玉県出身で、五郷町に移住し秘境の寿司屋「享楽仔鹿」を経営している。本田さんは福岡県出身。設計事務所で勤務していたが、熊野が秘める可能性を感じ、2022年に移住した。滋賀県出身の水田さんはニューヨークで暮らしていたが2年前に五郷町へ移住し、農業に取り組んでいる。萩原さんは国際中医薬膳師・管理栄養士で、薬膳料理を広める。

 I・Uターン組の竹村さんは飛鳥町出身で、ウィーンの美術アカデミーで絵画を学び、現在は「えのもとひさ」の名で、海外アーティストと熊野を結ぶ活動に取り組んでいる。大川さんは遊木町出身。様々なイベントやボランティア活動、介護の仕事を経て昨年、帰郷。現在は熊野市を拠点に書家アーティストとして活躍している。

 この内、本田さんはソフトバンクや電通などのオフィスづくり、空間デザインとビジネスを繋ぐコンサルティングなどに携わってきた。グローバル化が進む中で、どこの国の都市でも同じ景色が広がることに疑問をもち、日本の文化や精神性の美しさを感じるようになった。「地球や世界は多様だから美しいし面白い」と本田さん。多様性の一つとして、日本の文化や環境を大切にしたいと考えるようになった。

 縁があり熊野を訪れ、移住を決断した水田さんは「熊野に住みだすと、アクセスが不便とよく聞きました。でもそれは長所でしかない。アクセスが悪いということは、大きな資本が介入しづらく、住んでいる人一人ひとりの声が届きやすい。力のうねりになりやすい場所。日本の文化の砦となる、魅力的な場所」と語った。

 大気汚染が進むインドでも楽園のような環境を保つヴァンダナ・シヴァさんの農園、オグロツルの生態系を守るため近代化を拒否したブータンのプナカなどの例も挙げ「熊野で観光を考えた時、熊野でしかできない暮らしを見つめ直すことが大切。熊野の独創的な文化を世界の人は貴重に思ってくれると思います。そこに価値が出る観光のモデルと思います」と語った。

 この後も、水田さんらがそれぞれの視点から熊野の魅力を発表。第2部では根本さんの寿司や、萩原さんの薬膳料理を囲んで交流会も行われ、参加者が様々な幸せのあり方に会話を弾ませていた。

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