介護ヘルパー不足が深刻 依頼に応えられない現実も 紀南ケアネット調査結果示し危機感

 深刻な介護ヘルパーの不足により訪問介護事業が危機的状況にあるとして、この地域の介護保険事業所でつくる「紀南ケアネット」(紀南介護保険事業者連絡会・冨田啓暢会長)は12日、熊野市役所で記者会見を行い、独自で行った「訪問介護員の不足の現状に関する調査」の結果をもとに、人材確保の必要性を訴えた。

 会見には冨田会長と訪問介護事業所きららの濱中あつ子さん、特定非営利活動法人つどいの上野純一理事長、訪問介護あゆみの奥村智管理者が同席。冨田会長はまず、紀南介護保険管内の訪問介護事業所管理者と居宅介護支援事業所のケアマネジャー計107人を対象に行った調査結果(回収率約80%)を示し、現状について説明した。

 それによると、ヘルパーの不足による様々な弊害が見られ、訪問介護の依頼に応えられない現実や熊野市山間部など訪問が困難な地域があることに加え、土日や夜間、早朝のほか一日複数回の訪問が困難であるなど、「訪問介護」という制度がありながらも利用できないサービスに陥りつつあるという。

 また、現役ヘルパーの高齢化も著しいことや、登録制(パート)は労働時間が限られてくることも人材不足の一端に。冨田会長らは「この状態が続くと利用者にとって必要なサービスが受けられなくなるばかりか、利用者が在宅生活を希望しても困難となり、やむを得ず施設入所を選択する要因にもなっている」と危機感を示す。

 調査結果は紀南介護保険広域連合へ報告し、3市町の地域包括支援センターへ報告。今後具体的にどうすべきか、行政の支援も求めながら、課題を明確にして取り組んでいくという。

 冨田会長らは「全国的な問題であるが、この地方でも訪問が困難なことから依頼を断らざるを得なかった事例が非常に多く、ヘルパー不足が浮き彫りになっている。介護の仕事はその方の幸せを追求し、そこにやりがいを見出していくもの。これほど担当した方の家族から『ありがとう』と言われ、感謝される仕事はない。ぜひ多くの方に興味を持って頂き、少しでも人材不足を解消して必要なサービスを受けられる方が増えるような好循環につなげたい」と語った。

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