三重県は27日、熊野農林事務所管内(熊野市・御浜町・紀宝町)に発表している「クマアラート(注意報)」を11月30日まで再々延長した。今月14日には熊野古道松本峠でも目撃情報があり、県は登山客や地元住民に注意を呼びかけている。
クマアラートは、ツキノワグマの出没件数や人身被害の発生状況に応じて発表される注意報。県によると、熊野農林事務所管内では10月に入ってからも熊野市内で3、6、11、14、20、24日に相次いでクマの出没が確認され、基準値の3件を超えたため延長に踏み切った。
県全体では今年に入り27日までに計61件の出没情報が寄せられている。特に熊野市では22件と最多で、これまで山間部にとどまっていたクマが、人里近くや市街地周辺でも目撃されるケースが増えているという。
全国的にもクマの出没や人身被害が相次いでいる。環境省によると、ツキノワグマやヒグマによる死者数は今年度、過去最多。朝日新聞の報道によると、死傷者は住宅地など生活圏で襲われるケースが7割近い。気候変動や餌となる木の実の不作が背景にあるとみられ、人と野生動物の距離が年々縮まっている。
秋はクマが冬眠前に餌を求めて活発に動く時期。熊野市内で子連れのクマを目撃したという情報もある。人の生活圏にも出没する可能性がある、山歩きや農作業、散歩などでも十分な注意が必要だ。
県などによると、クマを引き寄せない工夫が重要。山や林に入る際は、鈴やラジオなど音の出るものを携帯し、単独行動を避ける。早朝や夕方、雨や風の強い日は特に注意する。見通しの悪い藪や斜面にはむやみに立ち入らない。果実や生ゴミなどクマの餌となるものは放置せず、飼料などは施錠できる場所に保管する。
また、住宅地周辺でも草刈りを行い、クマが身を潜めにくい環境を整えることが有効だという。もし出会ってしまった場合は、クマから目を離さずにゆっくり後ずさりして距離をとり、決して背を向けて走らないこと。万一襲ってきた場合は、防御姿勢をとって身を守るよう呼びかけている。

