熊野市育生町長井の「童心窯」で9日、窯出しが行われた。熱の調整が上手くいき、約500点が完成。参加者が満足いく仕上がりを喜んだ。
童心窯は北山村出身の陶芸家・橋詰洋司さんが「焼き物の面白さを伝えたい」と、2010年3月、育生町に住む実母の用地内に自力で窯を建てた。童心窯の名前は、橋詰さんが修行した日本六古窯の一つ、滋賀県信楽の「靖童窯」を主宰する靖童先生から一文字をもらい受け「童心に返り遊び心で楽しむ」という意味が込められている。
同窯に火を入れるのは毎年4~5月と10~11月にかけ年2回。窯の温度を1250度~1300度ほどまで上げ、1週間ほど昼夜を問わず、交代で温度を保つ。火を絶やさずに関係者らが交代で寝ずの守りをして、1300度近い温度で焼き上げた。
いよいよ窯出しとなった9日は完成を楽しみに愛好者のリピーターらが童心窯を訪問。住民らが見守る中、橋詰さんらが窯の中に入り、汗だくになりながら作品を一つひとつ丁寧に取り出した。
今回は三重大学3年生2人がボランティアで参加。作陶から火の番、取り出しまでを手伝った。橋詰さんは「非常に順調に窯の温度が保たれ、良い出来になった。三重大学のボランティアが入ってくれて非常に助かりました」と笑顔。三重大生らも「陶芸の現場を知る機会がなかったので、色々なことが学べてよかった」と汗を拭った。
また、今月23日の大森神社例大祭で振る舞われる「どぶろく」を入れる器も。祭典関係者らは「今年も風情ある容器でどぶろくの味を楽しんでもらえたら」と話していた。

