紀伊半島大水害から10年 官民が連携した取り組み 防災関係者が集まり情報共有

 平成23年9月1日から5日にかけて、三重県や和歌山県南部を中心に長期間にわたって激しい雨を降らせ、各地で浸水被害や土砂災害を発生させた「紀伊半島大水害」。これにより和歌山県で56人、三重県では2人が死亡した。未曾有の大災害からまもなく10年が経過するいま、悲劇を繰り返さないよう、各地でハード、ソフト両面の整備が行われている。

 紀伊半島地域における10年間の復興や防災減災対策を検証し、成果や課題を共有して防災力向上につなげようと、三重県は6月から11月にかけて、和歌山県、奈良県と連携した全4回の「紀伊半島大水害10年プロジェクト」を実施。初回は27日、御浜町役場を会場にワークショップが開催され、3県や熊野市・南牟婁郡の防災担当者、地域の自主防災組織メンバーらが参加した。会場では三重大学大学院工学研究科の川口淳准教授が「近年の風水害から見えてきた課題」をテーマに講話したほか、参加者が▽国・県▽市町村▽地域―の3グループに分かれて水害での教訓や課題の洗い出しや実施した対策、今後の取り組みなどを情報共有した。

 川口准教授は、昨年7月、豪雨災害で甚大な被害を受けた熊本県球磨村にある特別養護老人ホーム「千寿園」での様子を紹介。ここでは土砂災害の発生については以前から警戒していたが、洪水氾濫による浸水のリスクについては認識が薄かったという。施設の1階部分が浸水し、利用者17人がその場に取り残され、そのうち3人が救助され14人が犠牲になった。施設は事前に避難確保計画を作成して球磨村に報告しているが、その後に村から計画の見直しについての助言などは受けていなかった。避難訓練も行っていたというが、想定を超える状況に対応できる体制にはなっていなかった。

 他地域での災害を踏まえ、川口准教授は▽家庭、地域、行政が連携した事前防災行動計画「タイムライン」の策定▽建前やできない、やらないことは計画に盛り込まない▽訓練の実施―などを示し、「空振りを恐れない、行動する文化に。学校、家庭、地域、行政の強固な連携が必要」と強調した。

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