未だ近海で見当たらず 水揚げゼロ続くサンマ漁
昨年以降水揚げの報が届かず、厳しい状況となっている熊野市遊木町のサンマ漁。市街地などでも「サンマはどうなっとるんやろか」との声が多く聞かれることから、自身もサンマ漁船を操業し50年来のベテラン漁師である熊野漁協の濱田徳光組合長(70)に話を聞いた。
本紙記事をさかのぼってみると、2017年は12月に少量の水揚げがあって以降、2018年は1月に1・3㌧、2019年1月に1・2㌧と水揚げ量はごくわずか。2019年12月には阿田和大敷に3・5㌧がかかったことから期待は高まったが、2020年に入ってからは水揚げが無い状態が続いている。2008年度までは年間1000㌧を超えていたことを考えると、わずか10年程度で急減していることが分かる。
濱田組合長によると、サンマは北から寒流の親潮に乗って南下する。その際、沖を通る暖流である黒潮の沿岸部側かさらに沖側を南下。かつて黒潮は潮岬から銚子沖へと直線に流れたので、その沿岸側が漁場となった。遊木町などは潮岬と近いため黒潮までも50㌔ほどだった。しかし、4年ほど前からの黒潮大蛇行により状況は一変。黒潮までの距離が300㌔から400㌔ほどとなってしまった。
これにより、沿岸部で群れが見当たらなかった場合に探しに行く目安となっていた黒潮ははるか彼方に。群れを探しに行くにも当然燃料費などがかさむことに加え『そこまで行けばいる』というわけでもないことから、やみくもには出船できなくなった。熊野市からは燃料費等の支援も打ち出しているが、サンマの姿自体が見えていないことから、いつでも出船できるよう準備を整えて魚影確認の情報を待っている状況なのだという。
最盛期には遊木町だけでも20隻を超えるサンマ船があり、最も稼げる漁だったというサンマ漁。しかし現在は遊木町で5隻にまで減少し、サンマが獲れないことから別の漁などでどうにか生活をつないでいるという現状。濱田組合長は「海水温の影響か、外国船による公海での乱獲によるものか、半世紀も当たり前に獲れていたものが獲れなくなった。ただ、乱獲が行われていたという場所でも獲れていないようで、魚の全体量が減っているのは間違いないでしょう。現在はこの近海で1匹もサンマが見られておらず、とにかく情報を待ちたい。魚屋さんや地元の方、遠方の方も求めてくれている熊野のサンマ。何年か前、久々に地元で揚がったサンマの丸干しを食べたら、やっぱり美味しかった。『もう、あきらめろ』という声もあるが、あきらめきれないし未練がある。群れを探しに行き、サンマをたくさん獲りたい気持ちは強く持っています」と話していた。
